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お茶の豆知識

  • 2023.07.28
  • お茶の雑学

“蘭字”と呼ばれる、お茶の広告

写真引用:展覧会・博物館・美術館・記念館

上記写真は、2022年6月11日(土)〜8月14日(日)、平野美術館において開催された「蘭字ー横浜開港と近代日本の輸出ラベルー」展示の、海外向けお茶のパッケージデザイン。幕末に作られたものです。”展覧会・博物館・美術館・記念館”のサイトに掲載された写真を、引用させて頂きました。
今回のテーマは、お茶の広告ともなっていたパッケージ。ぜひ、注目して欲しいと思います。

蘭字で描くお茶の広告、その役割

”蘭字”とは、本来、オランダ語のこと。そして、もうひとつの意味があります。それが、”幕末のお茶パッケージ”。多色刷りの木版画で、A3くらいのサイズ感。このお茶広告が、”蘭字”と呼ばれていました。そして蘭字は茶箱に貼られ、日本から海外へと渡っていったのです。

さて、この蘭字、何とも特徴的なデザインですよね。日本画とは趣が異なります。
それは、輸出先の趣向に図案を合わせたから。
日本茶を知らない海外の人にどう発信したらいいのか、当時の人が考えに考えて、辿り着いた答え。そして、お茶の分量や等級、輸出会社名など必要情報もきちんと加えられ、商品PRの役目をしっかりと果たすパッケージを完成させていたのです。まさに、産業デザインの走りと言えますよね。
レトロっぽさを感じさせながらも先駆的な印象を受けるのは、そのような背景が透けて見えるからなのかもしれません。

ちなみに、それより以前は、”茶箱絵”と呼ばれる浮世絵が使われていたと言います。絵師は、なんと二代目広重!お茶への強い思い入れが感じられる人選です。しかし、こちらには、分量や等級、輸出会社名などの情報がありませんでした。
そのため、茶箱絵は、次第に蘭字へと変わっていくことになったのです。

お茶の広告は、静岡で作られた

蘭字になる前の茶箱絵は、横浜で制作されていました。というのも、当時の茶輸出が横浜港から行われていたからです。
それが時を経て、茶輸出は清水港から行なわれるようになります。すると、蘭字の制作も静岡へ。それにより、静岡には蘭字にまつわる情報が数多く残されることとなりました。

例えば、画稿。下書きであり、試行錯誤の後を見ることによって制作の情景を知ることができるため、大変貴重な資料と言えます。
また、アフリカ向けの茶輸出のため、蘭字を制作しようと送ってもらったのだろうと推測される資料も残っており、そこからは、当時のアフリカで流行っていた風俗や社会状況が垣間見られます。

そして、それら貴重な資料は、静岡大学における学習にも使われています。
その一環として行われたのが、蘭字を広く世間に知ってもらうための商品化と販売です。蘭字のデザイン化から商品の企画、開発とすべてを学生が担い、一般販売。蘭字周知の一翼となる活躍をされました。
また、得られた収益は静岡県茶業会議所へ寄付されるという、なんとも素晴らしい活動です。

蘭字とは、先人が静岡に遺した素晴らしい財産。幕末からの絆が、しっかりと令和へ受け継がれていることが分かりますよね。

知って欲しい、お茶の広告『蘭字』

芸術作品として、また産業デザインとして、とても優れた蘭字。しかし、その存在を知る人はまだまだ少ないというのが現実です。
というのも、輸出品に付けられたお茶の広告であり、残っていたとしても海外。日本で知る術があまり無かったためです。
しかしながら、作者の生み出した素晴らしい図案、デザイン力、そして印刷技術と、当時を知ることのできる素晴らしい作品ばかり。もっと、広く知られて欲しい!

日本らしさを残しながらも海外向けに昇華させ、海外の人の興味を強く惹いたお茶広告『蘭字』。これぞまさに、ジャケ買いを狙った原点とも言えるのかもしれません。

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