真茶園
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お茶の豆知識

お茶の葉は、なぜ揉まれるのか

茶葉を作る工程の中に、『揉捻』があります。これは、お茶の葉を“揉む“ということ。
なぜ、摘んだ茶葉をそのままで使わないのでしょうか?
そして、茶葉を揉む意味とは?
今回は、”揉む“という工程に焦点をあててみましょう。

日本、初のお茶

日本に初めてお茶が伝わったのは、平安時代のこと。中国からでした。
『お茶』とはいえ、形状は今の茶葉とはまったく異なるもので、この時の茶葉は丸い団子状をしていました。摘んだお茶の葉を蒸し、ついて、丸く固め、作られていたようです。
飲み方は、丸いお茶の団子を焙り、乾燥させます。その後、粉にして、それを煮出して飲むというもの。かなりの手間ですよね。
「さあ、お茶を楽しもう!」と思い立ち、この工程を辿るとなったとき、きっと多くの方が、「面倒だな」と思うのではないでしょうか。そして、飲むことを躊躇してしまいそうです。また、この工程から察するに、あまり美味しいものではなかったようにも思います。
その後、この中国からのお茶は、日本から姿を消してしまいます。
面倒だったのか、美味しくなかったのか、今となっては知る由もありませんが、この”日本が初めて接したお茶”についての記載は、日本の書物にほとんど残されていないのです。

現代のお茶に繋がる、”栽培”のルーツ

平安時代より数百年経った十二世紀末、再度、中国からお茶がもたらされます。このとき伝わったのは、お茶の栽培方法でした。そしてこれこそが、現代の日本のお茶のルーツと言われています。
伝わった後、その製法は日本独自の進化を遂げ、よしず等を広げて日光を遮るという新たな栽培方法を編み出すのですが、このように、日本に強く根付いた一方で、元々の中国の手法は姿を消してしまい、現代には残されていません。「中国より日本に伝わった」という事実だけが、今は残されるのみとなっています。

現代のお茶に繋がる、”製法”のルーツ

さらに100年ほどが経った南北朝時代、中国の明において、新しいお茶の製法が確立されます。それは、摘んだ茶葉を熱した釜で炒り、その後、乾燥をする際に『揉む』という工程が取り入れる、というもの。これは、葉の中に残る水分をしっかりと押し出すために取り入れられた工程でした。『揉む』という工程を取り入れたことにより、乾燥がしっかりと行われるようになります。そして、質の良い茶葉が作れるようになり、さらには味や香りも良くなっていきました。

また、この製法は、もうひとつのメリットを生み出します。
それは、『お茶の淹れやすさ』です。
それまでのお茶は、煮出したり、粉にしてお湯を加えるなど、飲むためにはひと手間が必要不可欠だったのですが、揉む工程を取り入れた茶葉は、お茶の葉と熱湯を容器に入れ、待っているだけでお茶が飲めたのです。これは、揉むことによって茶葉の細胞膜に傷がつき、お茶の成分が簡単に抽出できたためでした。そしてそれは同時に、人々の生活に、お茶がもっと身近なものとなるための大きな変化となったのです。

この、進化を遂げたお茶の製法が日本へ伝わり、今に至ります。
中国では、”炒る“という工程だったものが、日本では”蒸す“に変わるなど、細かな点では変化しているものの、おおまかには同じ製法が取られているのです。

お茶と一緒に伝わった急須

先に紹介した製法と共に、急須も伝わることとなりました。
それまでの製法において急須は必要なく、その”もの”自体、存在しなかったものです。しかし、新たな製法により、茶葉を熱湯でつけ置くための容器として、急須が必要となったのです。
今となってはお茶を淹れる際、当たり前の茶器なのですが、『熱した茶葉を揉む』という工程があればこその急須なのです。